TSUBOI Yuki

世界で戦えるスイマーに

仲間と泳ぐ楽しさと充実感

 元気に水と親しむ子どもたちの声が響く、平日夕方のスイミングクラブ。午後6時半ごろから続々と「選手・育成コース」の児童、生徒たちがプールサイドに集まってくる。それぞれが準備運動やストレッチなどをする中でひときわ笑顔の明るい、引き締まった体のスイマーがいる。全国の舞台で戦う体からは、しなやかながらも力強さが伝わってくる。「泳ぐことで得られる楽しみは何?」との質問に、「仲間と一緒に泳げること」と迷いなく応える言葉に、偽りはないようだ。
 練習は月曜日から土曜日まで毎日で、4000メートルほど泳ぐという。日曜日は試合があることも多く、文字通り「水泳漬け」の日々だ。課題はキックの力とスタミナ。練習はつらく、厳しいときもあるが、仲間やコーチが励ましてくれるから頑張ることができる。

国内トップクラスに成長

 本格的に泳ぎはじめたのは2歳半のころから。祖母が水泳のコーチで、家族も水泳をしていたことから自然な流れだった。最初はうまく息継ぎなどができず「苦しかった」とことを覚えている。だが徐々に泳ぐことができる距離が伸び、小学校高学年のころには大会で入賞することが増えてきた。中学生になると全国の舞台に進むことも増え、入賞や表彰台に上ることもできるように。いつの間にか、水泳は「大好きなこと」になっていた。
 コロナ禍で試合が開かれないなど思うように過ごせない日もあったが、徐々に大会も開かれるようになってきた。2021年6月の日本知的障害者選手権水泳競技大会では100メートル自由形で3位、同年12月のJSCA全国知的障害者水泳競技大会では50メートルと100メートルの自由形、200メートル個人メドレーで優勝した。2022年の同大会でも25メートル自由形は大会新記録で優勝。50メートルと100メートル自由形も2位と3つのメダルを手にした。

まずは、日本新記録

 目標は「パラリンピックに出場して、世界新記録で優勝すること」。そのためにはもうⅠ段階レベルを上げ、まずは日本記録を出すこというハードルを越えなければならない。あと1回、息継ぎを我慢して泳ぎ切れば優勝できた試合、自己ベストを出せたレースがいくつもある。日々のトレーニングから自分を追い込み、「きついことをもっと頑張らないと勝てない」ことが分かってきた。
 泳ぐことは自分のためだけではない。「いい成績を出せば、コーチや家族、仲間も喜んでくれる。みんなを元気にしたい」と笑顔で語る。ほほえむ瞳の奥に、世界で勝ちたいという強い思いを秘めている。

坪井 夢輝 選手

競技:水泳・パラ(知的)

つぼい ゆうき

2005年、鳥栖市出身。中原特別支援学校高等部3年。2歳半から水泳を始めた。中学進学後から全国大会で結果を残すようになる。2022年12月のJSCA全国知的障害者水泳競技大会では、25メートル自由形で大会新記録で優勝。50メートル、100メートル自由形でも2位に入った。日本記録を塗り替えて、パラリンピックに出場し、世界新記録で優勝することが目標。ベストスイミングクラブ鳥栖で練習を続けている。