KOBAYASHI Yuta

集大成の2024年、全力を振り絞る

スプリントで県内最速

 鮮烈なデビューだった。高校1年の県総体自転車競技(スプリント)で優勝。経験に勝る2、3年生を抑え、表彰台の真ん中に立った。
 「1年生だし、失うものは何もないから」。トラック2周で着順を競うスプリント。1学年上の先輩との同校対決決勝も積極的に前に出た。レース終盤、一瞬のタイミングをはかって一気にスパート。先頭でゴールを駆け抜けた。

2年連続で全国出場

 その夏、初めて出場した全国総体はスプリント予選で27位。決勝には進めなかったが「全国での自分の立ち位置が分かった」。より速くなるための課題も見えた。
 全国大会で対戦した選手たちは、自分の体より一回り大きかった。ペダルをこぐ下半身に加え、上半身もバランス良く鍛え上げられ、「全身を使うスポーツ」だと改めて知った。新たに低酸素の下でのトレーニングを始め、全身の筋力と持久力を強化。この1年で体重は4キロ増えた。
 苦い思いも経験した。高校1年で出場した栃木国体のロード(88キロ)で他の選手と接触、落車した。全身に擦り傷を負い1カ月以上、自転車に乗ることができなかった。翌年の県総体ではスプリント、ケイリンの2種目で優勝。全国総体や国体にも2年連続で出場したが、転倒の怖さからか、本来の走りを取り戻せていないという。スプリントの最高時速は約70キロ。恐怖を乗り越え、力を振り絞ることができれば全国で上位を目指せると自覚する。

中学時代は高校生と練習

 自転車競技に興味を持ったのは中学2年の時。世界最高峰の自転車レース「ツール・ド・フランス」で激走する選手をテレビで見て、「格好いい」と思った。貯めたお年玉でロードバイクを買い、起伏のある自宅周辺を走った。週末には10キロの道を3、4周し、新しい景色に触れるのが新鮮で楽しかった。
 その年の冬、競技関係者に誘われ、龍谷高校自転車部の練習に参加した。1キロを高校生に迫るタイムで走り、周囲を驚かせた。それ以来、週末に武雄競輪場で行われる同校の練習に片道1時間半かけ、自転車で通った。高校生の走りをまねて少しずつ速くなっていくのが何より嬉しく、「もっと速くなれるなら」と龍谷高校の門をくぐった。
 自転車レースは繊細な競技だ。コーナーのバンク(傾斜)の角度は会場によって異なり、試合前の試走でコーナーの入り方やスピードを上げるタイミングをつかむ。風が強い時は安定感のある幅広のホイール(タイヤ)を選ぶのが一般的。ただ、幅が広がるほど地面との摩擦が増えて体力を消耗するため、部品選びの見極めも重要になる。

全国上位目指し「走り切る」

 2024年度は最上級生になり、地元開催の国民スポーツ大会も控える。高校に入学してから2年間、武雄市の自宅から自転車で通学し、部活動に励む先輩の姿も見てきた。「もうやめたいとか何回も思うかもしれないけれど、残り1年、絶対にやり切ろうと思う」。目標とする全国大会入賞は、その先にあると信じている。

小林 優太 選手

競技:自転車

こばやし ゆうた

2006年8月、唐津市肥前町生まれ。田野小-肥前中卒。中学2年の時にロードバイクを購入し、独学で練習を始めた。週末は武雄競輪場まで自転車を走らせ、龍谷高校の自転車部と一緒に練習、競技にのめり込んだ。高校1年の県総体スプリントで優勝し、1年目で全国総体、国体、全国選抜大会に出場。翌23年の県総体はスプリント、ケイリンの2種目を制し、2年連続で全国総体、国体に出場した。身長183センチ、体重72キロ。