KOSHIBA Yuri

一歩ずつ着実に、16歳の挑戦

3歳からマットに立つ

屈強な男子選手の中で汗を流す女子高校生がいる。国内外で結果を残す鳥栖工高の小柴ゆり。「中学の時は相手の動きを止める戦い方だったが、今は相手との距離を詰めた接近戦が多くなった」と話し、戦術の幅を広げて高校年代での女王を目指している。
鳥栖工高で監督を務める健二や2人の兄の影響で3歳の頃からマットに立つ。競技を始めた頃は「遊び感覚だった」が、中学生になると高校生の胸を借りて練習に励んできた。2022年4月のJOCジュニアオリンピックカップでは3試合全てでテクニカルスペリオリティー勝ちを収めて頂点に立った。初めての国際舞台となるU15アジア選手権の切符を手にした。同年6月には全国中学生選手権で準優勝となり、アジア舞台へと弾みをつけた。
迎えたアジア選手権はリーグ戦で3勝1敗の3位。国内での大会とは違い「マットに向かうまでも緊張した」と独特の雰囲気も肌で感じた。「3位は悔しい。また日本で優勝して、世界舞台に立ちたい」。明確な目標に向けて、新たな一歩を踏み出した。

中学から国際舞台を経験

中学3年4月のJOCジュニアオリンピックカップでは圧巻の戦いぶりで頂点に立った。ただ、6月の全国中学生選手権大会と10月の全日本女子オープン選手権大会・中学生の部では、いずれも決勝で岩崎美優(東京・日体大桜華中)に苦杯をなめた。悔しさを糧に練習に打ち込んだ。11月の全国中学選抜U15選手権。決勝で6―2の判定勝ちを収めた。雪辱を果たした。世代別の日本代表に選ばれるとは思っていなかったが、大会での戦績が考慮され、再び国際大会に出場する資格を得た。15歳だった小柴にとって一つ上の世代に当たるU17で日の丸を背負うことになった。ただ、一切の気後れはなかった。「出るからには優勝したい」
意気込んだ通りの戦いぶりを見せた。大会直前に体調を崩して体重が3キロ落ちるハプニングに見舞われた。それでも、その逆境をはねのけた。緊張から体が硬くなってしまった初戦でフィンランドの選手に判定勝ちして勢いに乗った。準々決勝では〝宿敵〟岩崎と対戦。「対策はされる。先に攻める」と、直前の国内大会で勝利を収めていたことも自信に変え、強気の姿勢を貫いて僅差で勝利を収めた。

国内最高の施設から、日本の頂へ

2023年4月。鳥栖工高入学直後のJOCジュニアオリンピックカップでは高校生相手に堂々と戦い3位。ただ「高校生はレベルが違った。周りに比べて体が小さいから、体作りをして技も増やしていきたい」と決意を固めた。23年9月の鹿児島国体。試合中に右膝を負傷して無念の1回戦敗退。「この1年はけがが多かった」と12月には腰を痛めてしまった。
鳥栖レスリングセンターが完成したことで、けがの回復が早くなり、サウナ施設のおかげで減量も楽になった。国内最高レベルの施設で研さんを積む15歳はまだまだ高みを見据えている。「今までとは違った戦術を学び、体も作りたい。もっと強くなり、進化する1年にしたい」。今年の目標は、嬉野市で開かれる夏の全国総体で日本一を取ることだ。その先に大舞台を見据える。「毎年見にいっている。戦っている姿がかっこいい」と憧れを抱く全日本選手権への出場を勝ち取ること。「あの舞台に立ちたい」。一歩ずつ、着実に成長の階段を上る15歳の挑戦はまだまだ続く。

小柴 ゆり 選手

競技:レスリング

こしば ゆり

2007年8月4日生まれ。鳥栖小―鳥栖中―鳥栖工高。3歳から競技を始め、中学3年で出場したU15アジア選手権で女子62キロ級3位2023年2月にスウェーデンで開かれた「クリッパン女子国際」では国際大会初優勝をつかんだ。高校1年で挑んだ全国総体では5位に入った。