
日本トップを目指し、再スタート
SAGA2024国スポ、陸上競技三段跳び決勝。3回目の跳躍は、16メートルに迫る手応えがあった。だが無情にも赤旗が揚がった。2回目までの結果では、4回目以降の試技に進む上位8人まであと1センチ足りなかった。「最初の2本で8位以上を決めきれず、少し焦りがあったのかな」と振り返る。地元開催の国スポは10位で終わった。
実は、この国スポで選手生活に一段落付けるつもりだった。大会前から調子も良く、表彰台に届く可能性は充分にあった。だが納得できる結果を得ることができなかった。大会を終えて、「不完全燃焼のような気持ちが、だんだんと募ってきた」。国スポの優勝記録は16メートル29。自己ベストは16メートル21。大きなけがもなく、まだ充分に走れるし、飛べる。「もう一度、日本のトップを目指す」。再スタートするのに時間はかからなかった。
日本選手権3位
中学から競技を始め、佐賀工高では跳躍競技、走り幅跳びと三段跳びをメーンとした。「どちらかといえば幅跳びが好きだった」と笑うが、鹿屋体育大に進学後、「勝てる競技を」と考え、三段跳びに絞った。三段跳びはスピードと、跳躍の技術が記録を大きく左右する。「大学時代はスピードを生かして、勢いで飛んでいた」と振り返る。3年時に出場した日本選手権では見事に3位入賞。東京オリンピック強化指定選手にも選ばれ、日本トップの選手たちとしのぎを削った。
大学を卒業後、一般企業に就職した。入社の際「陸上を続けたい」と伝えていたが、残業や、職場の近くに練習施設がなかったことなどもあり、競技を続けることが困難になった。考えた末、就職先の愛媛から佐賀に戻ることを決めた。
アスリートリンク
帰佐後、就職先を探しながら、日中はSAGAサンライズパークなどで汗を流した。あるとき、午前中は選手として練習し、午後は陸上スクールのコーチとして働く「アスリートリンク」を紹介された。願ってもない環境との出会いだった。早速連絡を取り、メンバーに加わることを決めた。
コーチとなり5年目となる。「体の動きを感覚でなく、言語化して伝えられるようになった」と、指導者としての成長も感じている。選手として自分自身の試合だけでなく、子どもたちの試合の引率など、シーズン中はかなり忙しい。それでも、自らが目標とする試合に向けて、「仕上げていく技術は上がっている」と自信を見せる。勢いに任せてがむしゃらに飛んでいた学生時代とは違い、いまは跳躍技術を武器に戦っている。
目下の目標は、初夏の日本選手権と、秋の全日本実業団選手権。円熟の技術に加え、以前のスピードを幾分でも取り戻せば自己ベストの更新は十分に可能だ。「子どもたちの目標となるような成績を残したいですね」と笑う表情は、再スタートを心から楽しんでいるようだ。