まずは日本代表、その先は五輪
広大な筑波大の敷地内にある柔道場。全国トップレベルで活躍する選手たちが熱気を帯びた練習に取り組む中、今年から柔道部に加わった井上朋香選手も先輩たちについていくように懸命に汗を流す。2025年4月の全日本選抜体重別選手権では初出場ながら女子78キロ超級で準優勝を果たした逸材。
練習では男子選手とも果敢に組み合い、時には切れのいい技を繰り出すなど精力的に体を動かす。「自分の良さは強気の柔道。冷静を保ちながらも強い気持ちで前に出る柔道をやっていきたい」と力強く語る。
全日本選抜準Vで悔しさと手応え
全日本選抜は「まさか決勝までいけるとは思わなかった」。初戦の相手はこれまで一度も勝ったことがない新井万央選手(日本体育大)。全日本の合宿などでも一緒に練習しており、力の差を実感していたが、「まずは1回戦を勝つことに集中した」と振り返る。狙いは小外掛けのみ。「一番の得意技だったから」と明かし、小外掛けで有効を取った後、上四方固めで勝負を決めた。
勢いに乗って決勝まで勝ち上がり、相手は何度も負けている高橋瑠璃選手(SBC湘南美容クリニック)。互角の戦いとなったが残り20秒で有効を取られ、惜しくも敗れた。悔しさがこみ上げ、「自分に何が足りないか考え直すきっかけになった」と言う一方、「大きな大会で2位になれたのは自信になった」と手応えもつかんだ。
柔道は兄と姉の影響で5歳から始め、小・中学校時代は地元・北海道で負け知らず、中学3年の全中では個人でベスト8に入った。その活躍もあって佐賀商業高から声が掛かり、地元を離れ九州の地へ。
ほかの高校からの誘いがいくつもあったが「技術的に一番成長できそう」と進路を決めた。同校の印象は「練習はキツいが団結力が強く、監督、コーチも含めてチーム一丸」。実家から遠く離れて寮生活を送っていたため、「とても心強かった」という。2、3年のインターハイでは個人で連覇を達成し、団体は2年が優勝、3年が準優勝だった。
男子との練習で組み力や技が向上
筑波大に進んだのは教員免許をとりたいこともあったが、一番の決め手は男女が一緒に練習していること。「自分は78キロ超級なので、女子だと相手がいない場合が多い。男子とやっているということが大きな自信になる」という。入学後の5月に足首の手術をしたこともあり練習量が多いとは言えないが、男子と練習することで組みや技のバリエーションが確実に増えていると実感している。
高校時代と違うのは練習の密度。筑波大の練習は2時間と決まっており、高校時代ほど長時間でない分、「自分で考えて練習しないと強くなれない」と考えている。
当面、目指すのは学生の大会や講道館杯で優勝すること。講道館杯は高校1年から出場しているがベスト8止まりなので、「まずは優勝して日本代表になるのが第一の目標」という。その先には五輪を見据えており、「そのためにも技に磨きをかけていきたい」と意気込んだ。