KITAHARA Ryuma

仲間と追い続ける「日本一」の夢

高校最後の県総体で頂点に

 かたずをのむ観衆の視線を一身に浴びた。2023年5月に開かれた佐賀県高校総体・剣道男子団体戦決勝リーグ。1敗を喫し、負ければ優勝が遠のく緊迫した状況で、龍谷高校との最終戦に臨んだ。これまで何度も対戦した相手からコテ、メンを立て続けに奪い、激闘に終止符を打った。
 大将戦で2本勝ちを収めても笑顔はなかった。「優勝できたのか」。4校の総当たり戦を終え、三養基、敬徳、龍谷の3校がいずれも2勝で並んだ。最後は勝者数でわずか一つ上回り、頂点に登り詰めた。

部員も認める努力家

 「大事な場面で必ず(一本)取ってくれる」「人一倍、稽古を重ねている」。他の部員たちも認める努力家で、一つ上の先輩が剣道部を卒業してからは大将としてチームを引っ張った。23年3月の全国高校選抜大会、同年8月の玉龍旗大会はいずれも3位。自信をつかむとともに、「日本一」という目標が明確になった。放課後の稽古の前後には部員一人一人が目標と課題を発表し、互いを高め合ってきた。
 高校最後の北海道総体。決勝トーナメント1回戦で浜名(静岡)に敗れ、日本一の夢がついえた。新型コロナウイルスの感染拡大で、中学最後の総合体育大会は中止に。強豪の三養基高校へ進み、同じ悔しさを抱える仲間と切磋琢磨してきたが、「絶対に勝つという強い気持ちが足りなかった」。全国の頂点に立つためには、心技体の充実が欠かせないと痛感した。

勝つ喜び、成長の糧に

 剣道を始めたのは小学1年の時。当時、中学校で剣道部の監督だった父親の背中を追うように、2人の姉と同じ道場で竹刀を振った。小学2年の佐賀県学年別個人選手権大会で3位になり「頑張れば、もっと上を目指せる」。勝つことの喜び、努力が実を結ぶ競技の楽しさを知った。
 小学6年の春、佐賀県内外から88チームが出場した錬成大会で優勝し、優秀選手に選ばれた。中学時代は県学年別個人選手権で3位、2位と一つずつ順位を上げ、3年生の同大会で1位になった。佐賀県代表にも選ばれ、全国規模の大会で団体2連覇を果たした。
 高校入学後は、小学生の頃から竹刀を交えてきたライバルたちと同じチームで競い合った。「彼らがいたから成長できたし、苦しい時も頑張れた」。剣道を通して、かけがえのない仲間と出会った。
 高校卒業後は中央大学(東京)で研鑽を積む。全日本学生剣道優勝大会で史上初の3連覇を果たした強豪で、最高位の八段まで登り詰めた父・哲也さんの母校でもある。
 「高校で果たせなかった日本一を、次こそ果たしたい」。全国トップレベルの仲間たちと、夢を追う日々が始まる。

北原 隆磨 選手

競技:剣道

きたはら りゅうま

2005年9月、三養基郡みやき町生まれ。小学1年で剣道を始め、中学1、2年の時に佐賀県代表として「文部科学大臣杯争奪鷹揚(おうよう)旗全国選抜大会」に出場、2年連続の優勝を果たした。愛知県で開かれた23年3月の全国高校選抜大会で団体3位になり、優秀選手に選出。同年5月の佐賀県高校総体では個人戦、団体戦で頂点に立った。高校卒業後は、全日本学生剣道優勝大会で3連覇を果たした中央大学で研鑽を積む。