NAKANO Mika
妥協なく、世界の夢舞台目指し
佐賀商高入学で急成長
まぶしいぐらいの輝く笑顔で五輪を照準に鍛錬を積む。柔道女子78キロ級の中野弥花は佐賀商高での厳しい練習を乗り越え国内外の大会で結果を残した。2024年4月からは龍谷大でレベルアップを図り、夢のオリンピックに向けてシニア舞台で実績を挙げる。
中学時代までは「九州大会にさえ出たことがなかった」と話す。それでも、「逃げずにやれば結果は出るはず」と心に決め、高みだけを目指して佐賀商高の門を叩いた。「これでもかというぐらい、とにかくやりこんだ」。厳しい練習にも一切妥協することなく打ち込み、着実に力をつけていった。
高校1年夏の北信越総体では個人戦で3位、団体は準優勝で涙をのんだが、新チームになって迎えた春の全国選抜大会では団体戦で県勢初の全国制覇を成し遂げた。そのメンバーに名を連ねた。中学時代までは〝無名〟だったが、一気に強豪校の選手になった。
2年夏の四国総体。「本気で日本一だけを目指してきた。感じたことのない悔しさ」と悔し涙を流した。前の年よりも一つ階段を上ったが、それだけでは満足できない。優勝旗を掲げる先輩が多くのフラッシュを浴びる姿をじっと眺めた。「来年は何が何でも旗を持って、あそこに立つ」。強い決意は、それまで以上に練習への妥協を許さなかった。
恩師の思いに報いるため
四国総体の直後に初の国際大会に臨んだ。結果は銅メダル。憧れの日の丸を背負った経験を生かし、成長曲線を一気に加速させた。
一番印象に残る試合は2年生で挑んだ春の全国選抜。「多くの部分で自分のことを犠牲にして向き合ってくれている。井上(安弘)先生のために本気で頑張りたい」と優勝しか見据えなかった。体の大きな相手とばかり戦った世界カデ選手権でつかんだ自信を思い切りぶつけ、順当に勝ち上がった。迎えた決勝。恩師から「落ち着け」と制止されるほどの強気の姿勢を見せた。豪快な払い腰が決まるとうれし涙がこぼれ落ちた。「井上先生に日本一の景色を見せたい。頑張れた原動力だった」と振り返る。
2023年6月にチェコで開かれた国際大会では銀メダルを獲得。名実ともに高校生年代で日本を代表する選手に成長した。その年の夏には、歴代の先輩たちの手が届かなかったインターハイ団体優勝を手にした。個人戦でも頂点に立ち、最高の形で最後の夏を締めくくった。
2028年のロス五輪を目指し
高校生活は「きつい毎日だったけど、井上先生のおかげで乗り越えられた」と恩師の存在の大きさを感じる。柔道以外のことを考える時間はほとんどなかった。「普通は『JK=女子高校生』だけど、私たちは『JK=柔道高校生』って言ってました」と笑う。
高校では質も大事だったが、それ以上に練習量をこなしてきた。卒業後、大学の練習に参加するが「練習もきついが、一つ一つの練習の内容が濃い」と違いを実感する。それでも、明確な目標を持つからこそ頑張れる。それは2028年のロサンゼルス五輪だ。まずはシニアのカテゴリで上位に名を連ねることが、夢舞台につながることは分かっている。「講道館杯で優勝すれば国内外の大きな大会につながる」。大学4年生で迎えるロス五輪に向けて「そこに懸けてやろうと考えている」と、再び柔道漬けの日々を過ごす覚悟を固める。
佐賀商高出身の近藤美月(東海大)や田中龍雅(筑波大)らと一緒に練習してきた。大学に入ってすぐ、国内外で結果を出す先輩たちを「いまはレベルの違うところにいる」と尊敬しつつ「すごいけど、自分も同じ事をやってきた。頑張れば自分も(その位置まで)行けるんじゃないかという原動力にしている」という。佐賀で培った経験や力を世界への足掛かりにしていく。
中野 弥花 選手
競技:柔道
なかの みか
2005年9月16日生まれ。福岡県出身。友人に誘われて小学1年から競技を始めた。佐賀商高1年春の全国選抜で団体優勝を経験。2年春の全国選抜では個人無差別級で優勝、3年夏の全国総体では個人78キロ級で頂点に立ち、団体初優勝に大将として貢献した。2023年7月の国際大会で準優勝、10月には世界選手権に出場した。