OKAMOTO Chika

国際大会優勝で自信つかむ

 2024年7月、韓国・春川市で開かれたテコンドーのコリア・オープン大会。地元の韓国、ウズベキスタンの代表4選手を破り、女子41キロ級で頂点に立った。相手の胴を狙った中段蹴りでポイントを重ね、初めての国際大会で金メダルをつかんだ。

得意の間合いで勝負

 中段蹴りは、接近戦を挑んでくる相手との距離を保ち、防御の面でも効果的とされる。体を横に倒しながら、振り上げた足の裏で胴を狙う。時には上段蹴りと見せかけて、器用に中段に切り替えるフェイントも織り交ぜ、相手の防御をかいくぐる。以前は前に攻め入ってくる相手を苦手としていたが、「カット」と呼ばれる中段蹴りを身に付けたことで、得意の間合いで勝負する自信と手応えを得た。
 小学1年の全日本ジュニア選手権大会で3位。翌18年の同大会で優勝し、連覇がかかる19年大会も重圧をはねのけて1位になった。一足早く競技を始めた姉の留佳選手、兄の佳依選手の試合や稽古を見て「かっこいい」と始めたテコンドー。試合を重ねるごとに勝つ喜びも加わって、「もっと強くなりたい」と思うようになった。

敗戦を成長の糧に

 勝てない時期もあった。新型コロナウイルス禍から平時に戻った22年の全日本ジュニア選手権は3位。翌23年の少年少女選抜選手権大会も準決勝で涙をのんだ。24年7月の全日本ジュニア選手権では、過去2戦負けなしの相手に初戦で敗れ、会場の隅で泣いた。
 コロナ禍で予定していた試合が中止になり、緊張感を保つのが難しかった側面もあるが、「それは相手も同じ」。試合の動画を何度も見返して敗因を探った。仕事の合間を縫って、側で見守ってくれる父母の存在も大きかった。「頑張れば、いつか必ず結果が出る」。その言葉を信じて稽古を重ねた。
 将来性を買われ、24年にカデット級(12~14歳)の全日本強化指定選手に選ばれた。国内外の遠征や合宿に参加。自分よりも背が高く、手足の長い選手とも組み合い、相手の懐に素早く入り込む俊敏性に磨きをかけた。

率先して課題を克服

 稽古では常に試合を意識するようになった。後ろに下がりながら一瞬の隙をついて頭や胴めがけて足を伸ばす。3ラウンド計4分半の試合を戦い抜く体力を身に付けるため、稽古の合間も走り込みを欠かさない。「与えられたメニューだけでなく、自ら率先して課題克服に取り組む姿勢が備わってきた」。道場で指導に当たる濱田康弘さんも成長を実感する。
 テコンドーを主体としながら、中学校の陸上部(長距離)に加え、バドミントンのクラブチームにも所属する。同じ日に二つの練習が重なる時もあるが、「体力もそうだし、足の運び方などテコンドーに通じる動きが身に付く」と貪欲だ。
 コリア・オープンの優勝をきっかけに、「世界で活躍する選手に」という目標が明確になった。練習熱心で時に厳しい姉、兄を手本に、気迫をみなぎらせて相手を圧倒する力を身に付けている。

岡本 千佳 選手

競技:テコンドー

おかもと ちか

2010年8月16日佐賀市生まれ。五つ上の姉、二つ上の兄の背中を追って5歳で競技を始めた。18、19年の全日本ジュニア選手権大会で連覇を果たすなど小学時代から活躍。24年2月の全国少年少女選抜選手権大会で初優勝し、全日本の強化指定選手に選出。中学校では陸上部に所属し、バドミントンのクラブチームでも汗を流す。姉の留佳選手は23年世界選手権銅メダリスト。