
KAGEN Yumeka
高校3冠目指し、主砲の務め果たす
世代別の日の丸を背負う17歳がチームを勝利に導く。ソフトボール女子の加減夢華は、二つ上の姉・愛華の背中を追いかけて佐賀女子高の門を叩いた。姉妹バッテリーで臨んだ2023年夏の北海道総体、さらに24年夏の北部九州総体でいずれも3位。高校ラストイヤーの今年の最大の目標を「高校3冠」に据え、「全員で強くなりたい」と気合を込める。
大阪府出身で小学1年から愛華とともにソフトボールに打ち込んだ。地元の岸和田ジュニアクラブの先輩の姿に憧れを抱き、小学3年から捕手としてマスクを被る。中学時代は三塁や遊撃を守ることもあったが、捕手としての練習も続けてきた。中学3年の1月にU15日本代表の選考会に臨んだ。小学4年から全国舞台を踏んできた加減は「打力にも、捕手としても自信はあった」。二塁送球の速さの基準を突破し、打撃や走塁、実戦形式の選考会を突破した。
日本代表の肩書きを引っ提げて、愛華と同じ佐賀女子高を選んだ。「ボールを取ってから投げるまでのスピードは強み」。強肩を武器に、1年生からマスクを被った。投手を務めていた愛華とは息の合ったバッテリーを組んだ。中学時代には新型コロナウイルスの影響で姉と一緒に全国舞台を踏めなかった。「お姉ちゃんと一緒に日本一を取りたい」。愛華と夢華の最初で最後の夏舞台が始まった。
初戦の2回戦・聖霊(愛知)戦で姉妹バッテリーが〝全国デビュー〟を果たした。愛華がテンポよく投げ込むボールを夢華が受け止め続けた。準々決勝の山梨学院戦で再びバッテリーを組むと、今度は夢華が女房役としての役目を果たす。0―0で迎えた五回裏1死一、二塁。打席に立った夢華はフルカウントからの7球目を思い切り振り抜いた。「どんな球を打ったか覚えていない」ほどに無我夢中で放った打球はバックスクリーンに飛び込んだ。愛華にとって妹からの最高の援護点になった。
兵庫須磨ノ浦との準決勝には0―2で敗れた。「キャッチャーが妹でよかった」と涙を一切見せなかった愛華の姿に、夢華は「本当にすごい」と尊敬した。これから先は自分がチームを引っ張る。そんな強い思いを持つきっかけにもなった。「姉と一緒の学校でプレーできて楽しかった」。寂しさがなかったわけではないが、チームをけん引する主力として、前を向いてプレーを続けた。がむしゃらについていった1年目を終え、「一つ上の先輩たちと一緒にチームをつくっていく」。チームの核としての自覚が芽生えた。
2年になり遊撃を守ることが多かった。「守るときにみんなが近くて声をかけ合える。余裕を持ってプレーできた」。捕手では感じることができない違う視点も身につけることができた。夏の北部九州総体でも主軸として活躍して3位入賞に貢献し、2024年10月に開かれた佐賀国スポでも躍動した。「応援の数が今までで一番の多くて力になった。めっちゃ楽しかった」。優勝まであと1点届かなかったが、堂々の準優勝に胸を張る。
新チーム発足後は、姉と同じく主将を任された。「上はいない。自分の行動を見て周りは付いてくる。自分が一番やらなければ」。だからといって、自分を中心に考えたチーム作りをするつもりはない。「全員の意見を聞いて、みんなで一つになれるようにまとめていきたい。全員で一緒に強くなっていきたい」。一人だけが成長するのではなく、全員で成長した先に明るい未来が待っていると信じている。
高校ではまだタイトルを手にできていない。挑戦者としての気持ちを忘れずに練習に打ち込む。「チームとしては3冠を目指している」。春の全国選抜、夏のインターハイ、そして秋の国スポで頂点を取ることだ。長打を打てるパワーが魅力だが、状況に応じた打撃ができる器用さも併せ持つ。「どんな場面でも冷静に打席に立つ」。頼れる主砲がチームを日本一に導く。その準備はできている。
加減 夢華 選手
競技:ソフトボール
かげん ゆめか
2006年2月25日生まれ。大阪府岸和田市出身。地元のクラブで小学1年からプレー。岸城中では全国中学校女子大会で優勝を経験した。佐賀女子高に進学後は春の全国選抜と夏の全国総体で3位。高校1年時には女子U15ワールドカップで日の丸を背負って3位に貢献した。2024年夏にはU18代表として国際大会にも出場した。160㌢、右投げ左打ち。