SHIMIZU Yuri

きついこともあるが柔道が好き

 夕刻近い佐賀商業高の柔道場。清水優陸選手(18)は、女子部員を相手に鋭い投げ技を何度も繰り出し、時折表情を緩めながら楽しそうに柔道に取り組んでいる。「何度もやめたいと思ったことがあるし、練習がきついこともあるけど、柔道が好きなんだと思う」と明るい笑顔で話した。

全国で優勝したらやめられる

 茨城県出身で、柔道との出合いは小学3年生の時。コーチをしていた人に誘われ、地元の道場を見学したことがきっかけだ。道場には同じ小学校に通う普段はおとなしい子がおり、いつもとは違う引き締まった表情で技を繰り出している姿を見て「かっこいいと思った」という。すぐに柔道に惹かれたが、最初は勝てなかった。「自分より細い子に投げられるのが悔しくて」。負けず嫌いの性格に火が付き、体を鍛えるために片足跳びで道場に通うなど熱中し、5年生で県3位、6年生では県で優勝するまでに成長した。

 中学は親元を離れて愛知県の強豪校に入学。1年生から団体戦のメンバーに選ばれたが、指導が合わなかったことなどが原因で「うまく投げられなくなった」という。2学期には地元に戻り、柔道を辞めようと思ったが、両親から「全国で優勝したら辞めていいよ」と言われて続けることに。「当時は辞めるために練習を頑張っていた」と笑う。2年生になるとより良い環境を求めて、長崎県の明誠高校の練習に参加。近くの中学に通いながら高校生たちと練習に励んだことで「また柔道が楽しくなってきた」と振り返る。3年生で再び地元の美乃浜学園中学に戻ると、全国中学校柔道大会で準優勝を果たした。

 目標の優勝に届かず、「悔しかった」。両親も「高校でも頑張りなさい」と励ましてくれ、柔道を続けることを決めた。進学先を選ぶ際、強豪校からの誘いもあったが、佐賀商高の練習を見て、進学を決めた。「練習はきつそうだったけど、ここでだったら日本一になれると思った。チームが一つになっていて、いい雰囲気だと思った」という。練習はきつかったが「優勝して早く辞める」という思いを胸に練習を続けた。

佐賀県に恩返ししたかった

 1年生の終わり、全国高校選抜の63キロ級で頂点に立った。国際大会の話も出始め、「あこがれのジャパンの胴着を着れるかと思うとドキドキして楽しかった」。目標が「国際大会で優勝して辞める」に変わった。2年生のインターハイでは個人、団体ともに優勝。続く世界カデで個人優勝を果たしたときには、辞めたいという気持ちもどこかに行っていた。

 最後のインターハイは直前に故障したこともあり頂点に立てなかった。優勝を目指したSAGA2024も3位で終わり、「今までで一番悔しかった。佐賀県に恩返ししたかった」と明かす。春からはその悔しさを胸に大学に進む。名門校からも声はかかったが、のびのびと柔道ができる環境を選んだ。まずは故障を治しながら自分のペースで柔道に取り組むつもりだ。「上ばかり見ず、一つ一つやっていきたい。そしてまたジャパンの胴着を着たい」。新たな目標へ気合いが入った表情を見せた。

アスリート情報

清水 優陸選手
(しみず ゆうり)
競技: 柔道
2006年10月26日生まれ。茨城県ひたちなか市出身。中学時代は地元・茨城県をはじめ、愛知県や長崎県などでより良い練習環境を求めて回り、全中で個人2位。高校は佐賀商高に入学し、インターハイ個人・団体優勝、金鷲旗優勝、世界カデ個人優勝などの成績を残した。小柄な体格を生かし、「うまさとスピードで勝つ」が信条。「やめたいが口癖だった」と笑うが、「前だけ見て走りまくってきた」という一面も。ジャパンの胴着を再び身に着けることを狙っている。
清水 優陸
清水 優陸
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