高校3冠から五輪の頂へ
2025年滋賀国スポ。レスリング少年男子フリースタイル92キロ級の吉田悠耶(当時、鳥栖工高)は、鍛え抜かれたスタミナと盤石の試合運びでマットの上で輝いた。全国選抜とインターハイを合わせ高校3冠。国内の同階級で「高校最強」を印象づけた。
長崎県大村市出身で、3歳から「大村トップチーム」で競技を始めた。同市の郡中学では柔道部に所属する傍らレスリングに励み、全中選抜で優勝するなど早くから頭角を現した。鳥栖工高には、5歳年上の兄の背中を追って入学した。
「組み手」で磨いた勝負術
鳥栖工高では小柴健二監督と共に、一からレスリングを見直した。元々は幼少期から磨いたタックルを得意としていた。しかし、自分よりも大柄な選手やパワーのある選手には、簡単に通用はしない。6分間の試合を、優位に進めるべく「組み手」の強化に励み「悪い癖を全て取っ払った」とうなずく。
高校の二つ上には高校4冠を獲得した同階級の甫木元起(現在、日体大)がおり、日々胸を借りた。とにかくマット上でのスパーリングを重視し、実戦感覚を磨き上げた。
マットを下りると、ビデオで他の選手の戦い方を研究。「力だけでなく駆け引きも勝敗に直結する奥深さがある」。寝ても覚めてもレスリング一色の高校生活を送った。
1、2年で同校の全国総体団体連覇に貢献。個人でも3冠のほか、世代別の日本代表として出場したU17アジア選手権では3位に入り、力のある海外の選手ともしのぎを削った。活躍の場を世界にも広げる中で「五輪で優勝したい」と、幼い頃からかすかに描いていた目標は、明確になった。
名門・日大で世界の頂へ挑む
それでも、力のある大学生やシニアとの差はまだ大きい。昨年6月のU20アジア選手権や12月の全日本選手権では1回戦敗退。毎月1度、合宿に訪れていた日体大では、練習後に立ち上がれなくなるほど大学生に打ちのめされた。「練習や試合で上の年代と戦えば戦うほど、『金』への道は遠いと気づかされる」と、立ちはだかる壁の高さを痛感している。
26年春からは五輪金メダリストや世界選手権王者を多数輩出してきた名門・日大で強豪選手たちと鍛錬を積む。世界の頂への挑戦は、まだ始まったばかりだ。
日本人選手は軽量級で活躍が際立つ一方、重量級は国際大会での苦戦が続く。吉田自身、世界大会を経験する中で重量級で勝つ難しさは肌で感じてきた。「自分がその壁を打ち破るような選手になりたい。まずは学生チャンピオン、その先に日本一、そして五輪がある」。夢への階段を一歩ずつ踏み進めていく。