高校最後の夏に飛ぶ
高さ10メートル、「お前ならできる」
会場の静寂を破って飛ぶ。回り、ひねり、泡の中。入水までの一瞬に美しさを込める。九州のトップ選手として村山聖来選手は全国での表彰台を狙う。
所属する佐賀ダイビングクラブには、姉のクラブ体験について行ったことがきっかけで入った。「お前ならできる」。父の叫びに背中を押され、高さ10㍍の飛び込み台から飛んだ。「痛かったけど達成感があった」という小学1年の体験が記憶に残る。
当時は「(練習に使う)トランポリンが楽しかった」というが、小学3年で参加した全国大会で「表彰台に立った選手たちがかっこよく見えた」と、競技への意識が強くなっていった。
指導する同クラブの原口進也さんが「腹筋の強さなど素質は十分」と評価する村山選手は、徐々に全国大会でも成績を上げていく。中学2年時のジュニアオリンピック杯では3位。始めて表彰台に上り、「頑張ってきてよかった」と振り返る。ただ、強い選手が出場しておらず、「次はちゃんと実力で上ろうと思った」。
入水が決まった時は「バンッ」と〝水が切れた音〟がするという。飛び込み板のしなる動きと飛ぶタイミングを合わせると高さが出て技がきれいに決まる。そんな「気持ちいい」瞬間を目指す。
思い切り飛んで、出し切りたい
試合では緊張しがちだといい、「いかに自分らしく飛べるか」が課題。「そこで消極的になると悔いが残る。思い切り飛んで、自分の力を出し切りたい」とメンタルコントロールにも力を入れる。
飛び込みの仲間が頑張っている姿も競技へ引きつけられる理由の一つだという。
「みんなの演技を見て自分も頑張ろうと思う」。そして自分が成績を残すことで「飛び込み競技が、佐賀でも盛り上がってほしい」。
中学3年の福井国体では演技ミスのために入賞できなかった。高校1年のインターハイではもう一歩で表彰台を逃した。そんな悔しさをモチベーションに「高校最後の年は表彰台を狙う」と今年の夏にかける。
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