OYAMA Honoka

高く、遠くへ

自己ベストとの戦い

 近年、世代交代が進む日本の女子砲丸投げ。 20代前半の若手ホープが台頭している。その注目株のひとリが、尾山和華選手だ。同世代のライバルがひしめく中、記録更新に集中する。「記録を出せば、順位は後からついてくる。だから自己ベストを伸ばし続けたい」。2021年6月の日本選手権では決勝の最終6投目で15m18を出し、逆転で3位入賞を決めた。緊張感漂う決勝のフィールドでも表情を変えず、「心を無にして」黙々と試技をこなすメンタルの強さも持ち味だろう。

中高で全国優勝

 砲丸投げとの出合いは12歳の時。入学した中学校は陸上・投てき競技が盛んで、全国大会の常連校だった。未知の競技への好奇心と、「先輩たちのように全国レベルで活躍したい」というあこがれが向上心に火をつけた。
 成長は目覚ましく、中学2年で初出場した全日本中学校選手権でいきなり全国5位に入賞。翌年は見事優勝を果たした。高3のインターハイでも勝負強さを発揮し、自己ベストの15m11で全国優勝を飾る。「すっと目標にしていた15mの大台に乗せられて、最高の気分だった」。

未到の記録を目指し、佐賀国スポへ

 高校卒業後はさらなる成長を目指し、拠点を九州へ移す。陸上の名門・福岡大学(福岡市)へ進み、元日本記録保持者の野口安忠コーチのもとで専門的な技術を磨くためだ。自炊で体重を5kg増やし、ウェイトトレーニングにも取リ組み体力・体格の向上に努めた。結果、2018年のアジアジュニア選手権と九州インカレで2位に入賞。自己ベストも一気に巧15m78まで伸ばした。
 しかし現在、日本女子のトップ選手たちは16m台の記録を保持している。今夏の東京オリンビックでは、中国の選手が20mを超える大投てきで金メダルを獲得した。その様子をテレヒで観戦し、世界との大きな差を痛感した。「日本選手権で優勝し、日本記録を出すレベルにならなければ、世界で戦えない」と、未到の記録達成への決意を新たにする。
 今年4月からは社会人になり、新しい環境へ。佐賀県が推進する「アスリートジョブサボ」事業を活用し、烏栖市の医療法人社団如水会今村病院に就職した。午前中は病院の通所リハビリセンターで介護助手として働き、夕方から母校の福岡大学で線習に打ち込む。職場の先輩たちは快くサポートしてくれ、リハビリの利用者から「何メートル飛ばすとね?」と話しかけられることもある。「みんなに応援してもらっている」という実感がモチベーションとなり、「2024年の佐賀国スボで優勝したい」という意欲が湧き上がる。記録との戦いはこれからが本番。1センチでも遠くを目指し、自分を超えるための挑戦が続く。

尾山 和華 選手

競技:陸上(砲丸投げ)

おやま ほのか

1999年、兵庫県加古川市生まれ。小学4年の時に友人に誘われて地元の加古川ランニングクラブに入る。陸上の強豪校である志方中で砲丸投げに。2013年の中学総体で全国初優勝。姫路商業高では16年の高校総体で全国制覇。17年福岡大学に進学し、翌年のアジアジュニア陸上観技選手権と九州インカレで2位入賞。19年茨城国体優勝。 21年日本選手権3位。21年から医療法人社団如水会「今村病院」動務。