TANAKA Ryuga

目指すは、五輪金

兄の背中を追いかけて

 柔道との出会いは4歳のころ。三つ年上の兄(田中龍馬・筑波大3年)の背中を追いかけて始めた。そこから、常に先を行く兄が目標となった。「兄にできるなら、自分にもできる」と信じて、ひとつずつステップを上がってきた。昭栄中時代には全国3位となり、日本一が視野に入ってきた。
 佐賀商に進学し、高校1年の全国選抜で2位に。そして1年後の全国選抜でついに日本一になった。頂点に立ったとき「毎日指導いただいた先生(井上康弘佐賀商監督)や、支えてくれた家族にようやく恩返しができたような気がした」。高校入学時は国内大会の優勝が目標で、「世界は視野に入ってなかった」。急成長を遂げたいま、新たな地平が開いた。

世界ジュニア優勝

 2022年、高校最後の県総体で団体4連覇を達成した。その直後の6月、オーストリアで開かれたジュニア国際大会に、最年少の派遣メンバーとして出場した。大舞台でも緊張とは無縁で、初戦の2回戦から「自分の柔道を貫く」と畳に立った。「初出場とか高校生とかは関係ない。出るからには優勝する」と強い気持ちを持って臨んだ。結果は優勝。その瞬間、「ここからスタートという気持ちになった」。田中龍雅の柔道が、世界に向けて大きく翼を広げた。
 そして8月、世界ジュニア選手権大会(エクアドル)の日本選手団に、男女あわせて18人の中で唯一の高校生として選ばれた。大会の同時期には全国総体があったが「今後、シニアで戦っていく中でいい経験になる。自分にとってもチャンス」と捉え、迷いはなかった。
 「力を出し切れば勝てる」。そう自信を持って挑んだ大舞台。1回戦から一本勝ちするなど順調に勝ち上がり、決勝ではシニアのグランドスラムで優勝経験のあるジョージアの選手と組み合った。序盤は押されたが、徐々にリズムをつかむ。1度は押さえ込まれたもの、見事に抜け出し、逆に相手を押さえ込んで勝利をつかんだ。全国総体を辞退するほどの強い気持ちで臨んだ大会。「インターハイに出ない分、絶対に優勝する」と誓っていた。まさに有言実行の勝利だった。

2028年のロス五輪で頂点に

 ジュニア世界一の肩書きを手に、初めてとなるシニアの国際大会「グランプリポルトガル」に出場した。高校3年間の集大成として優勝を目指したが、この大会の優勝選手と3回戦であたり、力負けした。ポイントを先制したものの追いつかれ、延長の末に地力の差が出た。手足の長さに加え、シニアならではのフィジカルの強さを感じた。だが、「大学でしっかりと体をつくり、組み手で有利になる技術を身につけたい」と、課題も明確になった。
 高校卒業後は、兄も在籍する筑波大に進む。大学の4年間は、2028年のロサンゼルス五輪の出場のために大切な期間となる。ロス五輪出場と優勝は、揺るぎない目標となった。全てを柔道のために。ふるさとへの恩返しの思いを胸に、新たなフィールドへ飛び出す。

田中 龍雅 選手

競技:柔道

たなか りゅうが

2004年6月17日生まれ。佐賀市出身。昭栄中-佐賀商業高。幼少期から柔道を始め、昭栄中で全国3位、高校1年の全国選抜で2位、高校2年の全国選抜で優勝する。2022年8月の世界ジュニア柔道選手権大会(エクアドル)男子73キロ級に日本代表として出場し、優勝した。兄の田中龍馬(筑波大3年)、弟の田中龍希(昭栄中3年)も柔道選手。2023年4月から、筑波大に進学。