HOKI Genki

目指すは五輪の頂点

2年連続「高校3冠」

 2度深呼吸し、3回大きくジャンプするいつものルーティーンこなして立った、かごしま国体決勝のマット。相手に隙を与えない圧倒的な強さを見せつけ、2分41秒で優勝を決めた。「優勝以外はあり得ない」というムードの中、プレッシャーは感じていたが「自分の力を出すことだけに集中した。しっかり勝ててよかった」と振り返る。全国選抜大会、全国総体、そして国体の「高校3冠」を2年連続で達成した。無敵の強さを発揮した高校時代だが、「目指しているのはオリンピックチャンピオン。ここで喜んではいられない」と慢心はない。

中学までは勝てなかった

 レスリングとの出会いは保育園のころ。レスリングクラブで練習していたいとこの姿を見て「すごく面白そう」と感じ、自分もやってみたいと飛び込んだ。練習は楽しかったが、試合ではあまり勝てなかったという。負けた悔しさを胸に「強くなりたい」という思いは募っていった。小学4年の時、全国少年少女選手権で初めての全国優勝を飾った。父の「絶対に勝てる。自信を持ってやってこい」との言葉を受けて、全力でぶつかった。初めての頂点に、嬉しさがこみ上げ、涙があふれたことを覚えている。
 中学に入ると、鳥栖工高レスリング部の小柴健二監督から指導を受ける。コロナ禍で試合がほとんど中止となったが、出場できた全国大会では1、2回戦負けがほとんどだった。俺って弱いんだな、そう思ったとき「楽しもう」という気持ちが初めて芽生えた。気持ちが切り替わると、レスリングに対する姿勢が変わった。自分で考え、修正して、この繰り返しを続ける中でレスリングが面白いと感じてきた。

全国優勝、そして海外も経験

 鳥栖工高に進み、初めてのインターハイ。団体戦では格上と思っていた選手にも勝利した。コロナ禍に小柴監督から「大会はいずれ再開する。ここで成長して次に備えよう」という言葉を信じ、積み重ねてきたものが爆発した。以来、高校レスリング界のトップ選手として順調にステージを広げてきた。2年時の2022年にはキルギスで開かれたU17アジア選手権に出場。8位と満足できる結果ではなかったが、ついに国際舞台を踏んだ。翌2023年にはU17世界選手権のメンバーに選ばれ、5位と順位を上げ、世代間で世界トップを狙える位置にまで来た。

パリ、ロサンゼルス、そしてブリスベン

高校卒業後は日本体育大に進み、さらなる高みを目指す。仮題は体重と力強さ。世界と戦うには、持ち前の俊敏さを維持しながら、筋肉量を増しパワーで勝る海外勢に立ち向かわなければならない。
 かつての弱かった自分。それを知っているからこそ強さを渇望し、己を信じ、努力を惜しまなかった。世界と戦える肉体が完成したとき、集大成となるオリンピックチャンピオンの栄光が見えてくる。

甫木 元起 選手

競技:レスリング

ほき げんき

6歳から鹿島レスリングクラブに入り、中学から鳥栖工高の小柴健二監督のもとで本格的に競技に取り組む。鳥栖工高に進学し、1年時から団体戦全国初制覇に貢献。2年時と3年時は2年連続で全国選抜、全国総体、国体の「高校3冠」(いずれもフリー92キロ級)を達成した。2022年U17アジア選手権8位、2023年のU17 世界選手権は5位。日本体育大に進む。鹿島市出身