OKADA Keijyu

風を読む天才

屈指のスキッパー

 セーリング男子470級の岡田奎樹選手=唐津西高出身、トヨタ自動車東日本=は、そう称される日本屈指のスキッパー(舵取り役)だ。パートナーの外薗潤平選手(JR九州)とともに2019年の代表選考レースを制し、佐賀県関係者として初めて東京五輪の出場権をつかんだ。
 父の影響で、初めてヨットに乗ったのは幼稚園の時。小学校から大分や福岡のクラブに所属して、その頭角を現し、中学3年で広州アジア大会の15歳以下の部に出場した。優勝に照準を合わせていたが、結果は5位。世界の壁の高さを知った。
 「五輪で金メダルを取るには、メダルを取った人の指導を受けるしかない」。岡田選手は、唐津西高に進み、1996年アトランタ五輪女子470級銀メダリストの重由美子さん(故人)に師事した。
 重さんの指導方針はシンプルだったが、厳しかった。「海に出て船の感覚を養うことが大切。それは時間しか解決してくれない」。日の出から日の入りまで海に出て、基本の練習を繰り返した。つらくて逃げ出したくもなったが、「今の自分があるのは、あの練習があったから」と感謝する。重さんのもと、力を伸ばして、国体優勝やインターハイ連覇、世界大会入賞と次々と結果を出した。

自然の情報から最善のコースを

 ヨットの強豪早稲田大に進んでからも快進撃は続く。16年7月にドイツで開催された「470級ジュニア世界選手権」で日本人初の優勝を飾り、セーリング界の若手のホープとして注目を集めた。
 舵取り役である岡田選手の最大の持ち味は、風を見て、展開を先読みする能力。地理的条件や気象データを事前に頭に叩き込み、レースでは海の色や波の立ち方、潮の動きなど自然の情報から風を判断し、最善のコースで船を走らせる。
 現在、練習拠点を置くのは神奈川県茅ヶ崎市の江の島。東京五輪のレース会場になる場所だ。夏場はほぼ毎日海で練習し、気象データを記録している。五輪が1年延期になったことで、「コースの特徴を知り、経験値を積む時間が増えた」と前向きに捉える。
 実戦練習とともに力を入れているのが、道具の使い方の強化だ。センターポールやマスト、ロープなど、いくつもの道具を通じて船を操るヨット。通常のシーズンでは大会が続き、じっくり取り組む暇がなかったが、新型コロナウイルスで大会が次々と中止になったため、足元を見つめる時間ができた。より操りやすい船にするため、一つ一つの道具を見直している。

育ててくれた「唐津の海」

 日本のセーリングでメダルを獲得したのは、重さんを含めて過去2例。現在指導を受けるトヨタ自動車東日本の関一人監督は、2004年アテネ五輪男子470級の銅メダリストだ。関監督は「ゲームメークに関しては世界(の強豪)に勝っている」と、岡田選手の力を評価する。
 五輪が近づくにつれ、SSPトップアスリートとして支援を受ける佐賀県の期待を感じている。自分を育ててくれた唐津の海に恩返しし、セーリング競技を多くの人に知ってもらうためにも、東京五輪は大事な舞台だ。「金メダルのチャンスはあると思っている。佐賀のみなさんの応援を推進力に、最高の結果を出したい」。そう力を込めた。

岡田 奎樹 選手

競技:セーリング

おかだ けいじゅ

セーリング男子470級東京五輪代表。14歳でアジア大会に出場するなど早くから才能を発揮し、唐津西高ではスキッパー(舵取り役)として国体など数々の大会で頂点に立った。早稲田大からトヨタ自動車東日本所属。2018年6月のワールドカップ(W杯)マルセイユ大会で3位、同年9月のW杯江の島大会では日本男子初優勝を飾った。170センチ、64キロ。1995年、福岡県出身。