TSUTSUMI Honoka

佐賀の期待に応えたい

「好きじゃなかった」

 上背のある海外選手を次々とかわし、タッチラインへ一気に駆け抜ける。ラグビー女子7人制日本代表(サクラセブンズ)候補の堤ほの花選手=嬉野市出身、佐賀工高卒=は、身長154センチとラグビー選手としては小柄だが、スピードを武器に世界と勝負するトライゲッターだ。
 元ラガーマンでジュニアラグビーのコーチをしていた父明英さんの影響で、双子の弟とともに小学1年生から競技を始めた。「もともとはあまりラグビーが好きじゃなかった」と正直に振り返るが、競技を通じて友達が増え、「仲間と会うのが楽しくてのめり込んでいった」。小学生の時、リオオリンピックから7人制ラグビーが正式種目に採用されることが決まり、オリンピックを意識するようになり、練習にもさらに熱が入った。中学時代は福岡県の女子のクラブチームでもプレーし、高校は佐賀県立佐賀工業高等学校(佐賀市)に進むことを選んだ。

男子相手に技術吸収

 佐賀工高ラグビー部は、花園に39回連続で出場している全国屈指の強豪。堤選手は同部初の女子選手で、同級生と2人で、屈強な男子の練習に飛び込んだ。タックルで当たり負けし、スピードについていけないこともあったが、「男子も気遣いながらやってくれていたし、やりにくさはなかった」と言い、「それにあれくらい大きい男子相手に戦えないと、世界では通用しない」。リオオリンピック出場を目標に技術を吸収し、より高みを目指した。
 高校3年の時に、15人制で初の日本代表入りを果たし、進学した日本体育大学でも日本代表に名を連ねた。15人制のワールド杯や、7人制のワールドシリーズに出場し、活躍の場を世界に広げたが、目標だった7人制のリオオリンピックメンバーには選ばれなかった。「まだ経験が浅いこともあったが、小学生から目標にしていたリオに出場できなかったのは悔しかった」
 東京オリンピックに目標を切り替えた堤は、大学卒業後に東京のディックソリューションエンジニアリングに就職。「ラグビーを最優先に考えてもらえる環境」で、1年のほとんどを7人制日本代表の活動に充てている。昨年は新型コロナウイルスの影響で、大会が次々と中止になり、日本代表の選考スケジュールも大幅に遅れた。実戦経験を積む機会は減っているが、「今は自分のプレーの幅を広げるチャンス。スピードだけでは世界で戦えないので、パスで周りをうまく使えるようにならなきゃいけない」と前向きにトレーニングに取り組んでいる。

チームのために全力

 日本代表候補には現役の大学生など、堤選手よりも年下の世代の選手が増えた。堤選手は日本代表のキャプテンも経験し、チームを引っ張る立場としての自覚も芽生えている。「目標は東京オリンピックのメダル。チームのために自分ができることを全力でやるだけ」。コロナ禍でも、その気持ちは揺るがない。
 佐賀県のSSPアスリートにも認定され、堤選手の活躍に県民の期待が高まっている。帰省する度に「『がんばってるね』『けがしないようにね』など声をかけてもらって、本当に嬉しい」と言い、「地元の応援は力になる。期待に応えられるよう頑張ります」と東京オリンピックを見据えた。

堤 ほの花 選手

競技:ラグビー

つつみ ほのか

1997年、嬉野市生まれ。父の影響で幼少期からラグビーに親しみ、佐賀工業高校在学中の2015年に女子15人制日本代表に初選出された。2017年15人制W杯(アイルランド)や2018年7人制W杯(アメリカ)に出場。2019年にイタリアで開かれたユニバーシアード夏季大会の7人制で全試合に先発出場し、日本の初優勝に貢献した。