「一本」で強さ追求

悔しい残り2秒

2020年10月に行われた体重別の全日本選手権66キロ級。優勝した藤阪泰恒選手(パーク24)と対戦した3回戦は、大内刈りで技ありを先取したが、勝利目前の残り2秒、送り襟絞めで逆転負けを喫した。筑波大1年の田中龍馬選手は、「勝ちが見えていただけに」と悔しさを隠さないが、大学での成長を実感している。
祖父の勧めで小学1年から柔道を始めたものの、県大会で初めて優勝したのは6年のとき。「センスは良くなかった」という柔道少年は、努力を積み重ねてきた。
最後までしぶとく戦い抜き、一本勝ちを狙う。そんな自分の柔道を追求するきっかけになったのが、昭栄中2年で初めて出場した全国大会だったという。雰囲気にのまれて実力を出し切れず、2回戦敗退。悔しさを覚えながらも、全国の舞台を経験したことで自信も芽生える。「来年は日本一になる」と、周囲に宣言し、翌年見事に全国制覇を果たした。
高校進学時は県外からも誘いを受けたが、伝統校の佐賀商に進学。井上安弘監督の熱意のこもった指導で、才能を開花させた。

会心のインターハイ制覇

 2019年、鹿児島県など4県で開かれた「南部九州総体」の決勝では、攻めに攻めて相手を圧倒した。袖釣り込み腰と大内刈りで技ありを奪い、合わせ技一本。「今までで一番いい試合。これだけやって負けたら悔いはない、と思える内容だった」。持てる力をすべて出し切った、会心の勝利だった。
 パリ五輪に向けて世界で戦える体づくりに取り組むために選んだのが筑波大学。だが、その1年目は思いもしなかったコロナ禍でスタートダッシュを阻まれた。高校を卒業して3月下旬から部に参加したものの、数日間で緊急事態宣言が出され、練習が中止に。6月中旬から徐々に始まったが、初めは参加人数が限られ、体を追い込むようなメニューもできなかった。
 7月から本格的に動き出した「大学柔道」は、高校とフィジカルの力強さの壁を実感したという。ただ、コロナ自粛の中でフィジカルトレーニングを強化できたおかげで体をつくることができた。「マイナスだけではなかった」と前向きに捉える。

自主性が成長に

 走り込みやジムでのウエートトレーニングに取り組み、体の変化に手応えを感じる。トレーニングのメニューは部の仲間と情報交換しながら自ら組み立てた。自主性を重んじる筑波大の特色も、自分の柔道をつくり上げる力になっている。
 冒頭の体重別選手権では、高校で格上の印象があったライバルから背負い投げで一本を奪った。この大会を通じて「大学でも通用する」と自信を深めた。
 「心技体が調って強さにつながる」と、ひたむきに柔道と向き合う。「どこまでも追求できて、ゴールがない」という難しさの中に、「強くなる楽しみがある」と世界の高みを見つめる。
「強い選手はたくさんいる。もっと強くなりたい」。常に一本勝ちを狙う若武者の視線の先には、2014年のパリ五輪がある。

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