MATSUDA Ryu

日本代表を目指して

もう一度、水の中へ

 2022年8月、日本学生選手権水泳競技大会(インカレ)。水泳人生の集大成、「一番大事な大会」との思いを胸に刻み、得意の200mバタフライに臨んだ。結果は2年ぶりの自己ベストとなる1分57秒26で4位。「泳ぎ切った」との思いがあった。翌月のとちぎ国体は、競泳成年男子200m個人メドレーは予選17位で決勝に進むことはできなかった。「いい結果ではないけれど、全力を出し切ることができた。水泳をやってきて楽しかった」。そう言い切ることができた。競技から退くつもりだった。
 大学4年生の秋、普通よりはずっと遅い就職活動のスタートだったが、見事に内定を勝ち取った。卒業までの半年間、「普通の大学生」として過ごし、春からは社会人として働くつもりだった。だが、なぜか競泳の動画や映像が目に入ってくる。周りからも「もう少し泳がないか」との声もかけられてきた。年が明け、春の足音が近づいてくるころには「泳ぎ続けることはできないか」と考えるようになっていた。

アクセス・ジャパンスポーツ所属

 3歳のころから、姉の影響で競技を始めた。小学生の時には県学童記録を更新するなど、トップ選手としての片鱗を見せ始めた。佐賀学園高に進むと、2018年の全国高校総合体育大会(東海総体)で、1500メートル自由形、400m個人メドレーでともに3位入賞を果たした。卒業後は日本体育大学に進学。インカレでも上位入賞を果たすなど各世代でトップクラスの成績を収めてきた。だが、日本代表には届かなかった。
 大学卒業を機に、一度は水泳からも「卒業」を考えたが、代表への夢をあきらめることができなかった。競技関係者や恩師など、さまざまな人が「まだ泳ぎたい」という熱い思いに共鳴し、3歳から中学まで所属した「アクセス・ジャパンスポーツ」がサポートを申し出てくれた。また泳ぐことができる環境に「ありがたい。感謝の気持ちしかない」と、心底感じている。

パリ五輪を目指して

 競技から半年遠ざかっていたこともあり、まずは体と試合勘を取り戻すことから始めた。練習での泳ぎはは思ったより早く戻ったが、試合となれば別だ。出場できる大会には貪欲にエントリーし、「社名を背負う」という社会人選手として感じる新しいプレッシャーや緊張感を受け入れ、レースでの感覚を取り戻している。目標は日本代表の座。そして2024年のパリ五輪出場だ。
 大会の大小にかかわらず、一つ一つのレースで全力を尽くすことが、パリへの唯一の道だ。「応援してもらっているみなさんのためにも、結果で恩返ししたい」。

松田 龍 選手

競技:水泳(競泳)

まつだ りゅう

3歳から水泳を始め、佐賀県学童新記録を出すなど県内外の大会で活躍。2018年の全国高校総体で、1500m自由形と400m個人メドレーで3位入賞。2022年日本学生選手権200mバタフライ4位。200mバタフライのベストタイムは1分57秒12(2023年6月現在)。鍋島中-佐賀学園高-日本体育大卒。アクセス・ジャパンスポーツ所属。