TERADA Miyabi

世界の舞台で頂点に

抜群のパンチ力

 テンポの良い音楽が流れ、サンドバッグやパンチングミットを叩く重たい音が響く。軽快なフットワークを刻みながら、寺田都姫選手は適格で強烈なパンチをコーチのミットに打ち込んでいく。「最大の持ち味はパンチ力」と自認するだけあって、腕、腰、足と全身を連動して繰り出すパンチは一撃必殺の雰囲気を漂わせる。

小中と全国優勝

 兄の背中を追いかけ、小学5年の時にグローブをつけた。「練習で繰り返したコンビネーションを試合で出せたときの達成感」が夢中にさせた。自宅にサンドバッグやパンチングボールがあるなど抜群の環境も後押しし、小中学生の日本一を決める全日本UJ(アンダージュニア)ボクシング大会では、小学6年の3月に頂点に立った。中学進学後も4度の日本一を経験し、順調にキャリアを重ねてきた。
 2020年4月、高志館高に入学しボクシング部の門を叩いた。高校日本一、そして世界の舞台を目指す助走に入ったところをコロナ禍に見舞われた。大会はおろか、学校で練習もできない日が続いた。モチベーションの維持も難しいところ、支えてくれたのは家族だった。自宅のリビングに即席のスペースを作り「軽いスパーリングはできた」。兄や父は右手の使い方など、欠点について的確にアドバイスしてくれた。「容赦なく指摘してくれるから、本当にわかりやすい」と感謝の言葉を口にした。
 地道な努力が認められ、全日本女子の強化指定選手に選ばれた。2020年12月には、東京五輪で金メダルを獲得した選手らと一緒に強化合宿に参加。トップ選手のガード力、打たせない技術に大きな差を感じた。明確となった課題にも懸命に取り組み、同高の前田真一監督も「厳しい状況にもめげず、しっかりと成長している」と認めた。

逆境も力に

 大会さえあれば、必ず結果は残せる。そう思っていた矢先に、大きな壁が立ちふさがった。21年7月の熊本遠征で、スパーリング中に左手肘の靱帯を損傷する大けがを負った。患部は固定され、普通の練習はできなくなった。
 だが悲観はしなかった。元来、得意の左手に頼り気味で、右手の使い方に課題があった。「右手を鍛えるいい機会」ととらえ、けがの回復を待ちながら前向きに取り組んだ。その結果、「左右のバランスが整い、明らかに良くなっている」(前田監督)。世界はコロナ禍の出口に向けて動き始めている。近く、日ごろの成果を披露する機会がきっとある。「国際大会で結果を残したい」と引き締まった表情を見せた。

寺田 都姫 選手

競技:ボクシング

てらだ みやび

2005年生まれ、鳥栖市出身。兄の影響で、小学5年の時にボクシングを始める。小学6年で全日本UJ(アンダージュニア)ボクシング大会優勝。中学進学後もUJジュニア王座決定戦などで4度の日本一に輝く。2020年12月に東京五輪出場選手らとともに女子次世代アスリート合同強化合宿に参加。21年6月の全九州高校体育大会ライトフライ級に出場し、優勝した。全日本女子強化指定選手。