AMEDA Yuka

“考える”フェンシングでさらに上へ

バスケで培ったフットワーク

 フェンシングのピスト(競技場)は長さ14メートル、幅はわずか1.5~2メートル。反復横跳びのようなフットワークで、時にはじりじりと一歩ずつ、時には飛び跳ねるように動き続ける。フェンシングにはフルーレ、エペ、サーブルと3つの種目があるが、唯一、時間制限がないサーブルは、最も運動量が必要といわれている。
 中学ではバスケットボールのフォワードとして活躍。相手ディフェンスを一瞬で置き去りにするカットインを得意としていて、高校進学にあたってバスケットでの推薦入学の声もかかっていた。ただ、違うスポーツからの誘いもあった。フェンシングだった。まったくの未経験だったが、フェンシング選手に必要とされるフットワークの良さが関係者の耳に入り、誘われたのだ。バスケットかフェンシングか。考えても答えが出ず、父親に相談した。「全国から世界まで、羽ばたける可能性があるのは?」と聞かれ、思い切ってフェンシングを選んだ。

コロナ禍の大学スポーツ

 初めて剣を持ってから半年後、地方大会でいきなり優勝した。「自分に向いているかもしれない」と手ごたえを感じた。インターハイでも団体で準決勝まで進むなど活躍し、2017年にはブルガリアで開かれた世界ジュニアカデ選手権に日本代表として出場。高校卒業後は強豪校の一つ、中央大学に進んだ。
 2019年には全日本フェンシング選手権女子サーブル団体優勝。ますますの成長と活躍が期待されたが、新型コロナウイルス感染症の拡大で活動中止を余儀なくされた。感染拡大の序盤、各大学は特に厳しい対策とり、学生に対し学内への立ち入りを厳しく制限するケースが相次いだ。多くの学生が学ぶ中央大も例外ではなく、練習場への立ち入りが禁止された時期が3~4か月ほどもあった。出場決まっていた世界大会も中止になった。モチベーションの維持に苦労する時期もあったが、いつか開かれる大会を目指して、自宅などでできるトレーニングを続けた。
 

2024年を楽しみに

 これまで、フェンシングでは自分の勘を何よりも頼りにして思いの向くままに戦ってきた。だが全日本などで個人として優勝するにはもう一歩、成長する必要がある。そのためには考えるフェンシングが必要となる。考えてプレーするにあたって、高校生らを指導することはいいトレーニングにもなっている。失敗したポイントや改善点を伝えるには、プレー内容を言語化する必要がる。身振り手振りだけでなく、生徒らに分かるように言葉で伝えることが大切だ。言語化し、論理的に考える。この積み重ねが、目標とする国内ランキング4位以内に入ることを可能とするのだろう。
 目標に近づけば、2024年の佐賀国スポ優勝とパリ五輪出場も視野に入る。持ち前のスピードを生かしたフットワークに、考え抜かれた戦略が加われば、思い描く結果がついてくるだろう。

雨田 由香 選手

競技:フェンシング

あめだ ゆか

2000年、鹿児島県出身。鹿児島南高-中央大。高校進学時からフェンシングを始める。競技経験半年で早くも大会優勝するなど急激に成長し、世界ジュニアカデ選手権(ブルガリア)など国際大会を経験。2019年全日本フェンシング選手権女子サーブル団体優勝、2020年全日本フェンシング選手権女子サーブル8位。国内女子サーブルランキング11位。佐賀県スポーツ協会所属。